学ぶ意欲を高める英語授業のあり方

掲載日: 2018年5月25日
更新日: 2018年6月8日

掛川市立大須賀中学校教諭

梅田 晃

(平成16年・英語科卒)

 ここでは、静岡大学教職大学院のカリキュラムの一環として取り組んだ、K市A中学校(以下、A中学校)におけるアクションリサーチ研究の実践について述べる。

研究開始のきっかけ

 A中学校は市街地から東に10キロほどの場所に位置しており、周囲を豊かな自然に囲まれている。他地区と同様、少子化のあおりを受け、近年全校生徒数は百名前後で推移しており、市内で最も小規模な中学校となっている。このため、子どもたちは町の将来を担う地域の宝であり、住民たちの学校教育に対する期待が非常に大きい。A中学校の授業にはさまざまな地域ボランティアが参画している。
 このような地域において、近年英語教育に対する期待が高まっていた。グローバル化が進む社会いおいて、企業家を中心に、英語の重要性が地区集会の場でたびたび話題になっていたという。地域のこのような想いが筆者の元に届き、A中学校生徒の英語力向上のため、当時の二年生を対象に英語短時間学習の指導に当たることになった。

英語短時間学習の実践に向けて

 生徒の英語学習に対する意識を調査するために、質問紙調査を実施した。この結果、「英語を使えるようになりたい」「英語の勉強は大切である」「進路や将来の仕事に役立つ」と、英語の意義に肯定的な考えを抱いている一方で、「英語の勉強が好きだ」「英語を生かして将来仕事をしたい」と答える生徒は4割程度以下であった。このことから、生徒の英語に対するあこがれや学びたい気持ちは高いものの、実際には英語学習が思うようにいかず、困難を抱えている者が多いことが分かる。
 また、それぞれの英語技能への意欲に関しては、「外国の人の話を理解したい」「メディアからの英語を理解したい」などの「聞くこと」に関すること、また、「外国人の人と気軽におしゃべりしたい」という「話すこと」に関することに対して、向上意欲高いことが分かった。
 このため、筆者がまず取り組むべきことは、生徒たちの英語に対するバリヤーを低くすることであると捉えた。そこで、Edward.L.Deci(一九九九)が提唱する、動機づけを高めるための三つの心理的欲求」である「自律性の欲求」「有能性の欲求」「関係性の欲求」を満たすための学習活動を、短時間学習に取り入れることにした。自律性の欲求を満たすために「課題遂行型言語教育」、有能性の欲求を満たすために「一年時からの復習」、関係性の欲求を満たすために「協働学習」の三つを軸に、学習をデザインすることにした。また、発達障害などの理由から英語に限らず、学習すること自体に困難を抱えている生徒を支援するために、モジュール学習をユニバーサルデザイン化することも同時に意識した。さらに、英語学習に対して消極的な傾向にある生徒の状況を考え、「苦手を克服するよりも、得意をさらに伸ばす」「生徒の思いを大切にする」ことを重視し、生徒が質問紙調査の中で明らかにした「聞くこと」「話すこと」に関する技能向上への強い思いを考慮して、最終的なゴールを「英検3級程度の対話力を身に付ける」と設定し、生徒の英語を学ぶ意欲の向上をめざした。

英語短時間学習の実践

 英語短時間学習の流れは表の通りである。まず、15分間の山場となる課題を「一分間対話活動」と設定し、生徒は事前に準備をしない、即興的な英語のやり取りを行った。山場の課題に向かって、本時のトピックの確認、対話の参考にするためのリーディング活動(Intake Reading)、ターゲット文の確認を行う。一分間対話活動の後は、ペアで自分たちの対話を書き出すことで振り返り、ペアで解決できなかった疑問をグループで教え合い、最後にまとめを行う。

成果と今後の展望

 生徒は大変意欲的に英語学習に取り組み、英語に対する大幅な意識改善が見られた。第一回質問紙調査で「英語の勉強が好きか」という質問に対して肯定的な回答をした生徒は16名(44%)であったのに対し、第二回質問紙調査で「英語の朝学習に意欲的に取り組むことができた」という項目に対して肯定的な回答をした生徒は33名(92%)であった。また、観察生徒8名の内、5名において対話力の向上がみられた。
 今後は通常の英語の授業において短時間学習で用いた理論を取り入れながら、生徒の英語を学ぶ意欲を保ち、生涯にわたって英語を学びたいと思う生徒の育成に努めていきたい。

英語短時間学習の流れ

内容 時間配分
(1)本日のトピック紹介 30秒
(2)Intake Reading 2分
(3)ターゲット文の確認 1分
(4)1分間対話活動 1分
(5)振り返り1(ペア) 3分
(6)振り返り2(グループ) 5分
(7)本日のまとめ 2分30秒