大学支援と地域貢献

掲載日: 2018年5月25日
更新日: 2018年6月8日

同窓会会長

杉田 豊

(昭和36年・中数卒)

 今年は、同窓会が「静岡大学教育学部同窓会」と改称し、新たな歩みを始めてから60周年という記念すべき年に当たります。人で言えば還暦、華甲です。
 本同窓会の源流をたどれば、古くは明治10年の第1回静岡師範学校の卒業生にまでさかのぼります。戦後の学制改革により県内の各師範学校を統合し、国立静岡大学教育学部として新たな出発をした際、同窓会も大同団結し各師範学校の同窓会を統合し「静岡大学教育学部同窓会」と改称しました。爾来、会員の親睦を図ることはもとより、大学の支援と地域の教育の発展に寄与することを基本理念に地道な活動をしてまいりました。

変革の時代と大学改革

 さて、国立大学は今大きな改革を迫られています。知識基盤社会を迎え、厳しく変化する社会において持続的に活力を維持するためには、新たな価値を生み出す「知」を備えた「人材」の育成が必須の要件です。しかも久しく続く経済の低迷に加え、18歳人口が減少していく現実に鑑みれば、次代を担う優れた人材の育成こそはまさに喫緊の課題といえます。
 「今のこどもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業につく」(キャシー・デビットソンNY市立大教授)という予測もあります。変化の厳しい予測困難な未来を生きる若者たちには、ややもすれば社会の変化に受け身で対処しがちであったこれまでの姿勢を改め、主体的に自ら課題を発見し、他者と共に解決を図り新たな価値を創成する態度を身に付ける必要があります。そのためには、教師も子どもたちに「何を教えるか」だけでなく、子どもたちが「どのように学ぶか」という視点で授業改善をしていく必要があります。いわゆる「アクティブ・ラーニング」(能動的学習)の導入が求められる所以です。
 幸い、静大教育学部はこれまで時代を先取りする形で様々な改革をしてまいりました。今年度新設された「初等学習開発学専攻」はこの新たな時代の要請に応えて設置されたものであり、教員の基礎的指導力の上に、仲間と共同して課題解決的に学ぶ授業を開発し、未来の教室の先取りを目指しています。また、本県教育界の長年の願いでもありました「養護教育専攻」が設置されました。多感な子どもの心身の健康課題を敏感にとらえ、子どもの心に寄り添える優しさと温かい心を持った養護教諭の養成が実現します。
 さらに今年度から生涯教育課程等を発展的に解消し、学校教育教員養成課程に特化し教員養成の充実を図ることになりました。平成21年度の教職大学院、24年度には愛知県教育大との共同大学院博士課程の設置と教員養成のための充実ぶりは目を見張るものがあります。

教師づくりへの貢献

 同窓会としましては、この大きな節目を機にこれまで以上に地域の教育界の要請に真摯に向き合うとともに、大学とは一層連携を密にしながら「教育実践総合センター」を中心に手を差し伸べていく所存です。具体的には、実践指導に携わる講師の推薦派遣、教員採用試験に向けて教職経験豊かな同窓会員を講師に送り、1次試験、2次試験のための面接指導の一層の充実を図るなど、大学、学生の要望に添った支援に努めます。
 教育は国家百年の計と言われますが、教育の根幹をなす優れた教師の育成は何より優先されなくてはならないものです。未来を担う人材の育成は、教師の最大の責務です。私たち同窓会はこの思いを大切に着実な歩みをしてまいります。
 3月末、東京国立博物館の「黒田清輝展」を観る機会がありました。重要文化財で知られる『湖畔』もさることながら、戦災で焼失した幻の名画『昔語り』のための「画稿」(木炭デッサンと油彩下絵30点余)の展示に引き込まれました。それは、一つの作品を仕上げるためにどれほど多くの試行錯誤や地道な探求が重ねられたかが理解できたからです。少なからず感動しました。

信頼される同窓会活動へ

 同窓会活動におきましても地道な努力を怠ることなく、会員の親睦を基本に、大学の支援と地域の教育に貢献するという所期の目的を肝に銘じ、真摯な活動を通して地域から信頼される会にしたいと改めて念じています。
 終わりに、会員の皆様のご活躍・ご健勝をお祈りし、今後ともご支援、ご協力をお願いし挨拶とします。