デザインの力

掲載日: 2018年6月9日

静岡大学
教育学部教授

伊藤文彦

地域学部長

 私は、教育学部に着任して31年目に入りますが、一貫してデザイン・プロセスと発想法を研究しております。デザインの領域は企画から制作まで、幅広い領域に及びますし、デザイン対象そのものは、ロゴマークからプロダクト、建築やイベント、デジタル表現に至るまで、多岐にわたっています。こうした中で、私自身の教育、研究をお伝えするには、私の研究室の卒業生や在学生たちの活躍する最近の話題をご報告するのが最も皆様に関心をもっていただけるのではないかと考え、それらを紹介させていただきます。
 篠原宏一氏(2007年院卒/(株)丹青社勤務)は、文化施設空間のプランナーとして活躍しておりましたが、2016年、ふじのくに地球環境史ミュージアムのプランナーとして、日本空間デザイン大賞や世界のデザイン賞を受賞されました。全国で課題とされる廃校のリノベーションに対する教育・文化的価値を評価されました。
 竜沢賢吾氏(2012年卒/(株)博報堂アイ・スタジオ勤務)は、Webを始めとするデジタル分野で活躍しておりましたが、2016年、日本の若手クリエーターの大会で金賞を受賞し、日本代表としてカンヌで開かれた世界大会に出場してきました。トヨタなど一流企業のWeb広告を手掛け、広告業界の先端的な場面で活躍しています。
 長谷川広典氏(2017年院卒/(株)読売広告社勤務)は、在学時代の2013年、二科展ポスター部門で大賞を受賞し、以後連続して二回特選を受賞。今年度は募集に対して約500倍の狭き門の就職試験を突破しました。(おおや57号表紙)
 内山晃輔氏(4年次在学中)も同様に、2016年、二科展ポスター部門で大賞を受賞しております。(おおや60号表紙)
 さて一方、在学生はといえば、最近の教育方法として注目されるALやPBLを中心に据えた「連携」プロジェクトを積極的に行っています。
 2016年4月から始まった産学共同研究「医療器具のデザイン化への研究開発」においては、研究室の3・4年・院生9名が、地元の金属加工メーカーと共同して、医療器具の「柄」の部分のデザインに取り組みました。医療機関へのヒヤリングや3Dプリンタ出力を外注するなどして、精度の高い試作品を完成させ、今年度の全国数か所の見本市でも公開させる予定です。
 2016年8月には、ポーランド・ワルシャワ工科大学建築学部生12名が、築380年経過する古民家(磐田市の私の実家)を計測してコンピュータシュミレーションし、日本の文化を探るといったプロジェクトが行われました。これに合わせ、私の研究室の学生12名がジョイントして「デザインの未来」について考えるワークショップを、視覚的なコミュニケーションを駆史して行い、言語や文化を超えた有意義で楽しい交流が行われました。
 以上のように、研究室の学生達は、従来の教育学部の枠を超えた教育環境において、「デザインの力」を学び、社会人となった卒業生達は、度々研究室に戻ってきては、後輩たちにプロとしての「デザインの力」をアドバイスしてくれる循環ができたことが、現在のわが研究室のエネルギーとなっています。